6月29日(土)に開催された「foriio Creators meet up vol.3 in Osaka」  。SNSで話題の上司ニシグチさん、サタケシュンスケさんのお二人をお迎えし、盛況のうちに終了したイベントのレポートを、前編・後編に渡ってお届けします。

紆余曲折が垣間見えるふたりのクリエイター人生

山田寛仁(以下、山田):では、最初に上司ニシグチさんの方から簡単に自己紹介をお願いします。

上司ニシグチ(以下、ニシグチ):緊張するなあ。めっちゃ来て頂いてますやん(笑)。皆さんこんにちは、僕から自己紹介させて頂きます。僕のこと知ってる人います?お、結構いますね、皆サタケファンかと思ってました(笑)。知らない方もいると思うので、少し説明していきたいと思います。

名前は「上司ニシグチ」といいます。今月40歳になります。大阪生まれ、大阪育ちで、芸術大学を卒業しています。もうずっとグラフィック・デザイン畑におります。大学卒業後、百貨店の中のインハウスデザイナーとして10年間勤務して、そこでもの凄い数の販促ツールなどに携わっていました。10年経ったので別の仕事をしようかなと思って転職して、ペット用品の商社に入りました。そこではペット用品の企画やデザイン、パッケージなどをやっていました。そのあと、今年の4月に今の会社に入りました。

複業的にもいろいろやっていて、本の監修をしたり、ヴィレッジヴァンガードの商品を作ったり、インタビューを受けたり、あとコミュニティもいくつか運営しています。ヴィレッジヴァンガードの商品は、2年前にアイデアポストという形でアイデアのイラストを投稿していたんですが、その中から商品化してもらいました。

名刺のデザインで僕のことを知って頂いている方も多いと思うんですけど、副業的に名刺デザインのアウトプットをして、noteに掲載して、そこからさらに仕事を頂いたりもしています。

今日のようなイベントの登壇を、今年は積極的にやっていってます。るってぃさんと関西大学でやったり、東京でくわたぽてとさんとイベントやったり。

本の監修でも「隠れ大阪人の見つけ方」(祥伝社)という本の監修をしました。Twitterとかでよく拝見する方々に沢山参加して頂きました。

山田:有難うございます。では次にサタケシュンスケさん、自己紹介お願いします。

サタケシュンスケ(以下、サタケ):サタケシュンスケです、よろしくお願いします。現在37歳で、もともと会社勤務でグラフィックデザインの仕事を5年間ほどやっておりました。フリーのイラストレーターとしては、現在13年目です。3児の父で、そこはニシグチさんと一緒ですね。

どんな絵描いてるの?という事でいうと、動物の絵が好きですし、得意です。ちょっと平面的なフラットな絵が好きで、ほっておけば動物の絵ばかり描いております。

実際どんな仕事をしているの?というと、出版関係でいうと本の表紙・カバーイラストや教育関係。絵本も一昨年初めて出しました。今年の秋にフランスでも出版されます。

他にも広告のお仕事や、イベントのトークゲスト、商品広告、商業施設のイベント広告、企業やサービスのキャラクターなど。たまにですが、イラストとデザインを合わせて受けることもあります。パッケージ、雑貨・玩具、アパレルやブランドとコラボしたものなどもあります。空間装飾では、僕がデザインしたものを立体にしてもらったりすることもあって、香港にある商業施設の前に飾ってあるものもあります。その他に神戸空港の装飾とか、壁面のグラフィックなども担当しています。最後にワークショップですね、子供向けのワークショップをやっています。広告のお仕事とセットで受ける事で、凄くいい反応を頂いています。

前職では5年間、車関係の広告やパンフレットなどを作っていました。僕、車に1mmも興味ないので、5年間何がかっこいいのか全く分からずやっていました(笑)。ゴリゴリの硬質デザインで、イラストの入る余地が全くない仕事だったので、会社に依存せず、潔くすぱっと辞められたんですね。

イラストレーターとしての最初の仕事は、梅田駅での路上販売でした。これが僕の第一歩。地べたからスタートしたイラストレーター人生だったんですが、今こうして呼んで頂けるのは奇跡だと思います。路上からここに這い上がって来たのは。

ニシグチ:いや絶対しばらく家におったでしょ(笑)。

サタケ:もちろん路上でforiioさんに声をかけられたわけではないですけど(笑)、今に至るまでに経験したいろいろな事から、今日は何か有意義な事がお話出来ればなと思います。

山田:では本題に行きましょう。皆さんから事前に頂いている質問はサタケさん、ニシグチさんにも事前に共有していますので、頂いた内容含めてお答えしながらフリートークをしていきましょうか。

実績がない頃のお仕事獲得術

山田:ではこのテーマで話していきましょう。まさに先ほどの路上販売のお話ですよね。

ニシグチ:実績がないから路上から入ったんですよね?

サタケ:そうです。専門学校を出て、就職してデザイナーとして仕事はしていましたが、イラストレーターとしては知り合いも一人もいないし、どこで作品を見せたらいいかも分からない。当時は街を歩いていると路上でポストカードを並べている方が結構いたんです。賑わっていたし有名になる人もいたので、SNSもなかったし、簡単に始められるし、お金もかからないのでやってみようと。

ニシグチ:あれって取り締まられないんですか?

サタケ:取り締まられますね(笑)もちろん駄目です。警察の方が来て「駄目だよ」と言われて一旦どいて、また戻っていったりして。皆そんな感じです。

ニシグチ:したことないんで興味あります。

サタケ:しなくていいです(笑)。

ニシグチ:これはとりあえず、路上に出てやってみろという事ですか?

サタケ:違います違います(笑)。路上では恐らく3か月もやってなかったですね。結局、不特定多数の人に自分の絵を見てもらった所で、何にも繫がらなかったんですよね。その時は1枚150円とかで買ってもらって「嬉しい!」と思いますし、「この絵が人気あるな」とか少なからず情報は得られますけど、全然知らない人に対してアピールし続けても何にも先に繋がらない。なので、結果辞めてしまったんです。怪しい人にも声をかけられましたしね。「ちょっとうちのギャラリーで展示してみない?参加費かかるけど」みたいな、かなり足元を見られているようなものもありました。「誰でもいいから見てください!」という出し方をしていると、変な人しか寄ってこない。それは路上に限らずで、例えば今でもSNSで「誰でもいいから見て!」みたいにやっている方もいるけれど、多分それは違うと思うんです。

ニシグチ:路上がそのままSNSになった感覚で捉えてみたらどうだ、という話ですよね。

サタケ:そうです。SNSは皆が見るものですけど、誰に見てもらいたいのかははっきりしないといけないなと。そこで気づいて見てもらいたい人を、見てもらいたい場所に呼ばないといけないなと思い、僕ははじめてそこで個展をやったんですね。実績が無い時に、一番最初に形にしたのは個展です。ちゃんとギャラリーを借りて、しっかりお金を使って、自分の作品で埋めて、自分が来て欲しい人に招待状を送って、来てもらって…というのが、イラストレーターとしての仕事の始まりです。見てもらう姿勢を整えた事ですね。

ニシグチ:実際どうだったんですか?。お金もかかるし、結構勇気がいるじゃないですか。

サタケ:最初は無名なので、呼んだ人が本当に来てくれるかなんて分からない。大半は知り合いの人が来てくれるんですけど、ギャラリーを選ぶときに「僕の展覧会だから」という事でなくても来てくれる出入りの多いギャラリーを借りて、普段から作家さんが出入りしている所に僕が飛び込んでいったんです。そこで生まれた繋がりは沢山ありますし、今もそこから繋がっている人もいるので、凄く大事な事だなと。どこで見せるかを自分で決めて、「見てください」という姿勢を取ったのが、実績が無い時の獲得術。それが仕事になるかどうかは分からないけど、人脈には繫がりましたから、引いては仕事に繋がったのかなと思います。

山田:招待した方にはどんな方が多かったんですか?

サタケ:友人・知人ももちろん呼んでいますし、当時大阪のFM802が割とアートに力を入れていて、そこのプロデューサーさんとかも来てくれました。

ニシグチ:それは送り付けるんですか?

サタケ:当時はネットに掲示板というものがあって、作家さんとプロデューサーさんとが結構頻繁にやりとりしていた所に、僕も「今度個展やるので観にきてください」って書き込んだ。そしたら「行く」と反応してくれたので、それでDMを持っていったら実際に来てくださりました。ちゃんと来て名前も残してくれたので、後日お礼をしに行って、それでその後お仕事も頂きました。やっぱり路上だと呼べないじゃないですか?

ニシグチ:確かに、怪しさしかない(笑)

サタケ:だからやっぱり見てもらうのに、こちらの本気を見せなきゃいけない。簡単に出来る事はスルーされてしまったりするので、「場所」を用意することは重要ですね。

ニシグチ:今見てると何人かグループでやる人いるじゃないですか、あれはどうなんですか?

サタケ:どういう狙いで集まっているかによるんじゃないでしょうか。無作為にギャラリー側が選んだ作家さんだけとかだと、誰に見て欲しいかが分からない。

ニシグチ:やっぱりターゲット設定が大事なんですね。

サタケ:でも最初から個展てリスクがありますし、誰も来てくれない可能性もあるので、グループ展で知り合いを増やしてから個展、というのはありだと思いますけどね。ニシグチさんは個展とかには足を運ばれますか?

ニシグチ:僕は意外と行かない。友達が声をかけてくれたら行くんですけど、あまり自発的に行くことはないかな。1回会った人とかだったら行こうという気になるし、有名な人のだったら行く気になるんですけど、作品も人も知らないとなかなか行かない。

サタケ:そうだとすると、やっぱり最初はグループ展で、皆の知り合いを呼んで紹介し合おうという方がいいのかもしれませんね。

ニシグチ:今に置き換えた時、デザフェス(※注:デザインフェスタ有限会社が主催するデザインフェスタ)とかクリエポ(※注:リードエグジビションジャパン株式会社が主催するクリエイターEXPO)とか、イラストレーターさんのよく出ている商談イベントに僕の周りでも勝負しに行ってる人が結構いるんですけど、そのへんどうなんですか?

サタケ:デザフェスは出た事あります。クリエポは当時はまだ無かったのかな?でも話はいろいろ聞いてます。

ニシグチ:そこで結構個展っぽく見せてる人もいますよね。

サタケ:デザフェスなんかは割と作品性高く、ファンの人に見に来てもらう感じ。クリエポはガチガチに商談イベントなので、仕事に関係ないお話は厳禁な雰囲気があるみたいですね。でも実際あれで仕事を取っている人もいるし、クリエポのイベンター側が呼んでるお客さんが良いという話もよく聞きます。デザフェスは完全にファンの方向けの方が良いかなと思います。

持っていき方、見せ方が全然違うんですよね。僕も多分、当時あったら出てると思います。お金はかかりますが、自分がポートフォリオを持って東京に行って…という事をやるよりは全然早い。なんなら、クリエポついでに廻ったらいいんじゃないかな?という感じ。やっぱり観てもらう場なんでね。

山田:前提をちょっと言い忘れてしまったんですけど、今回は「クリエイターとクライアント、双方から考えるお仕事獲得術」ということで、先ほどの例のように色々なイラストレーターさんと一緒にお仕事をする立場という事で、敢えてニシグチさんをクライアント側に、そしてサタケさんはクリエイター側という事でお話出来ればという狙いがあったんです。ニシグチさんは、実績が無い方からの売り込みを受けた事はありますか?

ニシグチ:僕自身、会社の業務ではイラストレーターさんと仕事をすることは無かったんですけど、先ほどの本(「隠れ大阪人の見つけ方」(祥伝社))を作る際にやりとりがありました。ただ、どういうイラストレーターさんを選ぶかという事は、僕一人だけじゃなくここにいる二人(※注:客席にいらっしゃったプロジェクトメンバーの方)も一緒に入って決めていったんですけど、その時に選定のベースになったのは一つはTwitterで、もう一つはリアルな知り合いからどんな人がいいかというチョイスをしてもらう感じだったんですね。そういう時に、そもそも知っててもらわないとセレクトに引っかかってこないので、何かしらアウトプットが出ているという事が大前提になるのはどうしようもないんですよね。仮に今ここに素晴らしい実績があったとしても、僕にしか見えていないと、知ってもらう機会がないのと一緒。今の時代SNSは無料だし、何かしらアウトプットが出ている状態でないと気づいてもらえないので、実績がなくても自分で何かしら考えて常に発信しないといけないんじゃないかな、と思います。

サタケ:「実績がない頃」という事を、もしかしたら皆さん「仕事をした経験が有るか無いかが選ばれる基準として重要で、そもそも実績が無い人ってどうしたら良いの?」っていう事で聞いていると思うんですけど、ニシグチさんその辺って気にされてました?お仕事経験が豊富だから安心っていう事もあると思うんですけど、でも実績がないからと言って頼まないのか?というと、違うのかなと。

ニシグチ:この本に関してちょっと細かい事を話すと、10章あって、その他に間に1カットづつイラストが入るという感じだったので、つまり10カット→1カット→10カット→1カット…みたいな構成。ここからどのイラストレーターさんに頼んで行こうか決める際、10カット描かないといけない人は同じ人が10カット描くのが前提なので、ちゃんと描ける人をまずは10人選ぼうと。その間に入る1カットの人たちは、是非ここでチャレンジしてほしい人たちを選んでいます。それこそTwitterで見て、この人いいな、頑張ってるなという人に応援枠的な形で考えたものなんです。

サタケ:日頃から見ている中で気になっていた人をそういった時にピックアップして、という事ですね。

ニシグチ:しかも僕単独じゃなくて、プロジェクトメンバー4人ともが違う人を挙げているので、皆で話をしてチョイスした感じですね。

サタケ:今までお仕事したことの無い方にいきなり100万、200万の大型案件をお願いするのは、やっぱりちょっと不安はありますよね。段階はあるんでしょうね。徐々に仕事を大きくしていくというか、その第1歩目がその1カットであったり。

ニシグチ:今回出版社さんからお話を頂いた際も、書籍が出るということがイラストレーターさんにとって如何に良いことか、という事は僕も分かっていたので、そういう意味も込めて1カットづつにして、参加できる人数を多くした感じではありますね。

サタケ:ボリュームが小さくて予算もまだ少なくても、まずはそこから取っていく方が良いんですかね。あとは細かく仕事をくださる方に答えていく方がその後に繋がるというか、階段を登っていくような売り込み方が出来る。挿絵の場合は、いきなりメインビジュアルになりそうな大作・力作ばっかり発表していると、依頼する側も「どうやって使おう?」と悩んでしまいますよね。まずはカットの小さい絵を見てもらう事からかもしれません。

ニシグチ:そう思います。この時は僕らも本当に勉強になりました。

山田:サタケさんはそういう「チャレンジ枠のお仕事から」という事はあったんですか?

サタケ:先ほど「小さい挿絵から売り込んだ方がいい」と言いましたけど、個展の時は割と相反する力作ばかりを並べてしまったので、直接仕事には繋がらなかったんですね。名前は憶えてもらえたと思いますが、そこは仕事にはなりにくいなという感じでした。だからそれはそれで、そこで関係性が生まれた方々の所にまたお邪魔させて頂く際に、小さい絵を見せたりしました。まず知ってもらって、会ってくれる人にはそこで初めてまとめて見てもらうという感じですかね。

お金の話はどのタイミングでするのがベスト?

山田:次はこちらのテーマで話していきましょう。

サタケ:お金の話ですね。

ニシグチ:サタケさんの大好きなお金の話(笑)。サタケさんよくTwitterでお金の話してますよね、むしろお金の話しかしてないですよね(笑)。

サタケ:銭ゲバキャラでいこうかなと(笑)。でも大事な話ですよね。お題としては、どのタイミングでお金の話をするのが良いのかという事で、これはもう発注側にも受ける側にも関係しますよね。

ニシグチ:依頼する側の立ち位置として、やっぱり予算があるわけですよ。それを守るように我々は会社から言われているので、それ以上出せないという人が多いはず。予算追加となったら、稟議書を書いて、「初めから言っとけよ」って怒られたりね(笑)。依頼する側としては、割と初めの段階で「予算はこれだけです」という事は言っています。それが有難いと思われるかどうかは人によって違うと思うんですけど、個人的にデザインの仕事を受ける時も最初に聞いています。その予算範囲内でどうできるか?という事を聞いている感じです。逆に、サタケさん的にはそれをされると嫌とかありますか?

サタケ:僕も最初に提示してもらえた方が有難いですね。少なかったら少ないと言えるし、こんなにもらえるんや!と思ったら、その時はまあ「問題ありません」て(笑)。でも、たまに「いくらで作って頂けますか?」と言われて困ることもあります。内容がしっかり決まっていて、イラストの点数はこれで、使い方はこれで、期間はこれで…と、細かく出してもらっていたら見積もりも出しやすいですけど、「なんとなくこんな事がやりたいんですけど、サタケさんていくらで描いてくれるんですか?」という聞き方をされると、ね(笑)。

ニシグチ:そういう時は、どうやって答えてるんですか?

サタケ:基本的には「もう少し詳細を聞かないと描けません」と言います。ただそういう場合はざっくりとした金額感だけ知りたいことが多いので、こちらもざっくりとした多めの金額感で伝えて、そこで相手の出方をみます。あまり下手には出ずに、自分が思うMAXの値段を伝えてそこで出方をみるんです。そこで難色を示されたら「じゃあ予算もあると思うので」と聞いてみて、出来る事・内容で調節するという方法もあると思いますし、こちら側から「予算もあると思うので言ってください」と言うと、素直に教えてくれる事もありますね。聞いてみる事も大事です。

経験があって、以前代理店さんから依頼があって「こういうものを作ってくれますか?」と聞かれた時に、本当に相場が分からなかったので「先に予算を出してもらった方が有難いです」と伝えたら「25万です」と言われたんですね。その時僕は10万ぐらいかなと思っていたんです。下手に見積書を出して10万ぐらいですと言っていたら、ね(笑)。そういう事もある。例えばその仕事が、「広告代理店→デザイン事務所→イラストレーターエージェンシー→僕」だったらもっと予算も少ないと思いますけど、代理店から直接の依頼だったので、結構思っているより予算があったという。誰から頼まれているのかで出方は変えるようにしました。代理店やクライアント直なら多めに言って大丈夫だし、決裁権や調整できる権限を持っていたりするので、金額の調整が出来る。でも、デザイン事務所などからの依頼は、恐らく予算ももうこれ以上は増やせないという状況だと思うので、そこは様子を見て、相手によるという感じです。

ニシグチ:さっきもお話していたんですけど、相手によってアプローチの仕方は変わります。たまにあやふやにする人いますからね、会社も。予算を聞いてみても「決まっていなくて…」などと言って、先に仕事だけ進んでいって、後でめちゃくちゃ低い額を言われるという。

サタケ:そういう事があると本当に不信感に繋がってしまうので、実際そうだとしても、その場合は動きたくないですよね。「本当に予算もらえるのかな?」と思いながら仕事するのは、精神的にも良くないですし。

ニシグチ:案件がポシャると凹むじゃないですか。デザインもイラストも、一生懸命描いても「来年になりました」とか平気で言われるじゃないですか。笑ってるってことは、これ皆経験あるんですかね(笑)。

サタケ:最初に話すべきことは話す。僕はやっぱり、最初に金額の話ができた方が信頼感を持てます。変に遠慮される方がもやもやしてしまう。

ニシグチ:でも、なかなかうまくいかない事あるじゃないですか。修正が予想外に多いとか、追加で予算もらわんとあかんって時とか。そういう時はどんな感じで伝えているんですか?

サタケ:本当は最初に修正回数などを決めておいた方が良いんですけど、そうもいかない場合もあるし、その時は「追加予算出るんだったら直しますけど・・・」と言いますね。直しの種類にもよりますけどね。味付けを変えたいとか、クライアントの拘りでっていう場合はお金を頂かないと出来ない。根本的に内容が違うという事であれば、それはもう仕方がない。対応する時もありますけど、基本的には追加で予算をもらえないならやらない。

ニシグチ:依頼する側からすると、こちらの頼み方が悪いのかもしれないけど、言ったものと違うものが上がってくるパターンて結構あるんですよね。「こういう風に作って」とお願いしても、思っていたのと違う。スキル不足なのかもしれないし、そこは結構判断に迷いますね。

サタケ:イラストレーターさん側が勘違いして作ってしまったのかもしれない場合は、それはイラストレーターさん側の責任ですからね。

ニシグチ:その辺の押し引きがあったりしますよね。伝える側があかん時もあると思いますし、その辺りは申し訳ないと思う事もよくあります。「ちゃんと言ってるのになんであがってこない!」っていうことも、何度かありましたけどね。

サタケ:その場合は指摘するんですか?

ニシグチ:僕は言ってますね、違うなという点は。実際に似ているものを見せて「こうして欲しい」とか。でもそうすると「ニシグチさん、それは初めに言ってくださいよ!」と言われたりする。

サタケ:それはもう喧嘩ですね(笑)。

ニシグチ:「あァ?もうやらへんぞ!」みたいな(笑)。

サタケ:でも勘違いでそうなってしまう事もあるし、そうするとお互い気分が乗らないですもんね。

ニシグチ:少なくはなりましたけど、昔は「出来て当然でしょ」という感じだったんですよ。特に百貨店にいると、鼻が高くなってくる。仕事あげてやってんねん、みたいな。今はそんなことありませんけど、昔はそういう時期もありましたね。多分恨まれてましたね(笑)。

サタケ:つきものですよね。でもギャラが良かったら全然いいんですよ、何言われても。

ニシグチ:「#サタケ式」ですね(笑)。僕ちょいちょい使ってたんですよ、そのハッシュタグ(笑)。

サタケ:これは僕の中の考えなんですけど、予算がしっかりしていたらある程度のわがままも聞けるんです。もう全然言ってください、と。それが「予算も限られているのにまだ言うの?」という事になるときつい。

ニシグチ:「まだ言うか?」って言うんだ(笑)。僕何度か遭遇しているんですけど、描いたけどテイスト違う人とかいるじゃないですか。こちらは最初に伝えてるのに、「そういうテイストなんで」と言われたりして。

サタケ:僕も「今はこれしか描かないんで」みたいになってた時期ありました。ちょっと前に描いていたタッチでお願いされて、仕事は受けたんですけど、描いてて「やっぱり違う。今描きたいのはこれじゃない」となって。「これは昔の絵なんで」となって、うわわ…と思わせてしまった事はあります。クライアントさんからしたら仕事が進んでしまっているから、「作家のわがままで何言ってんねん」と思われたと思います。その時はめちゃくちゃ説得されて、昔と今のタッチのちょうど間ぐらいの微妙なものが出来てしまって。クライアントさんはそれでOKとしてくれたんですけど、今から考えるとそんな事言うのさえ駄目な話だし、今そういう時期の方に会ったら「言ったものと違います」と伝えると思う。基本的にはNGですよね、言ったものと違うものは。欲しいものに対してお金を払うわけですから、最初と違うものが出来てきてもお金は払えないというのは正しいです。

作風が変わる中で、ポートフォリオをどう使いこなせば良い?

山田:ちょっと気になったんですけど、イラストレーターの方の作風って変わっていくじゃないですか。ポートフォリオに載せておくものって、どう管理するのが良いと思いますか?

ニシグチ:サタケさんのやつも見せてもらった事ありますけど、昔のポートフォリオと今のとで変わってますよね?

サタケ:けっこうマメに変えていて、特に初めの頃は1年に1回ぐらいガラっと変えて、常に新しいものを見てもらうようにしていました。

ニシグチ:昔のものって今は出さないんですか?

サタケ:出さないですね。それこそ、今は昔のようなテイストの絵を描きたくないという気持ちもあるし、今描きたい絵を見てもらった方が良いですね。昔のタッチで描いてくださいと言われても困るので、最初から見せないようにしています。

ニシグチ:鳥山明さんでも「ドラゴンボール」とか全然違いますもんね(笑)。

サタケ:昔の絵柄に戻せという事ではないし、本人もそれは望んでいない。良いと思う方向へ変わってきているはず。ホームページなどは実績を貯めていく場所ですが、意識して消すこともあるし、見てもらうべきものへ調整をしていきます。見てもらいたいものだけをforiioに載せたりとか。1ページでばっと見れるだけの量、10点から15点ぐらいの「今見てほしいものだけ」をまとめています。何か聞かれたらそこを見せればよいし、変に昔の作風を期待されることも無い。最初にそのあたりはしっかり話をしていますね。

金額を上げていくにはどうすれば良い?

サタケ:お仕事を受ける側として聞きたい話なんですけど、ちょっと安く受けてしまったなという時に、その仕事はまあ良いとして、2回目・3回目と仕事が続いた場合に金額を上げていくのってどうなんでしょう?

ニシグチ:会社として頼む側からすると、だいたい前回や去年の実績、直近でイラストレーターさんに頼んだ際の金額感からしか話をしないですし、やっぱり会社の上の方々には分からないと思うんですよね。「前回この値段だったのに、何で上がってんねん」みたいな。よほどの理由が無いと通らない。こういう人で、こういう利点・効果があって、という事をちゃんと言えたとしても、それでも同じ人だとやっぱり難しいですよね。「頼む人を変えたらこういう絵に変わるんで」ということもありますけど、同じような内容だったら「倍になっとるやんけ!」って怒られますよね。

サタケ:だからやっぱり最初なんですよね、お金の事を言うのであれば。最初の絵が、物凄く売上に貢献したとかなら可能性もありますけど。

ニシグチ:基本的に会社は費用対効果的な部分を見ていると思います。物凄い評判が良かったという事が百貨店勤務の時にありましたが、「やっぱりこの人で!」となってしまえば、割と上乗せになりやすいかも。イラストを描いてもらった後の効果がどうだったかということが、やっぱりポイントですよね。

サタケ:よく相談を受けるのが、「ちょっと安い金額を提示されたんですけど、こんなの受けていいんでしょうか?」というもの。やっぱり最初に安く受けると安いままでしかないので、受けないか、最初に交渉して上げてもらうかしないと駄目ですよね。

ニシグチ:今いらっしゃるイラストレーターの方も、「強気の交渉って言われても、どの程度の強気やねん!」みたいなところあると思うんですよ。「私、そんなに描けないのに10万って言ってもいいんでしょうか?」みたいな。そういう時、どのあたりの金額にしたらいいのかなという不安と疑問を抱いている方も多いと思うんですよね。

サタケ:安く言ってしまう人が多いんですよね、僕の周りにも。でも、それで潰れていく人も見ているんです。安く受け続けてしまって、もう描く事自体がしんどくなってしまう方とか。作品は世に沢山出ているけれど、お金にならなくて結局ダウンしてしまったりとか。だから、安く受けちゃ駄目なんです。ずっとその金額で受け続けて大丈夫、という金額にしておかないと、辞めざるをえない事態になっちゃうんで。

ニシグチ:その辺りの金額感て、どうやって得たんですか?同じグレード感の方でないと計り知れないじゃないですか。僕、けっこうデザイン料とかについて周りの人に聞くようにしてるんですよ。「名刺のデザインってどれぐらいでやってますか?」て。それ結構大事だと思っていて。

サタケ:大切ですよね。一人で考えでも分からないし、本にも書いてない。僕も周りに聞いてます、同じぐらいのキャリアの友人とかに。

ニシグチ:それで僕も知恵をつけたんですよね、「言っていいんだ」みたいな(笑)。

サタケ:そこはまあ仲間を使うというか。それこそSNSとかでも聞いたらみんな言ってくれますしね。僕もDMで結構「こんな仕事来たんですけど…」って頂くんですよ。タイムライン上では言えなかったりしますけど、ここに来てくださってる方はDMを頂ければお答えします(笑)。

ニシグチ:皆さん、サタケさんにDMで値段の相談してみてくださいね、このイベント出ました~って(笑)。1人1回までは答えてくれると思います(笑)。

サタケ:聞いて、それに答える事も業界内で経験を作っていくことになるので。僕がだまってしまうと、結局誰も分からないし。

ニシグチ:例えばDMで聞かれて、それが知らない人の場合、その人の何を見るんですか?値段設定の時って、その人の成果物をある程度見るんですか?

サタケ:その人の絵柄は関係なくて、クライアントさんが何をしたいかで決めますね。その人の絵柄が時間のかかるタイプであっても、さらっと描けるタイプであっても、それはあまり値段には関係ない。もちろん1か月かかる大作もあれば1日で終わる作品もありますけど、でもまあやっぱりクライアントにしたら関係なくて、「欲しい絵にいくらかかるか」というだけなんです。そこに徹夜で描いたとかは関係ないですよね。単価を上げていくのは無理なんで、高く評価してくれるクライアントとの巡り合わせしかないですよね。安く受けてしまったら、もう切って、評価してくれる人と付き合う方が分かりやすくていいんじないかなと。

ニシグチ:僕は名刺の仕事の単価とか、こうやって(右肩あがりで)上げていってるんですよ。どうやったかというと、はじめの時は割と安い単価でやっていて、次やる時に「あの名刺のデザインはこれぐらいの値段でやりました」って言ってるんですよ。それを繰り返してる。1つ前のやつを実際もうnoteに残していて、やることになった経緯まで残ってるんで、「これぐらいのパッケージ感でこの値段」っていうのが分かるようにしているんですよね。

サタケ:説得材料にしているということですよね。階段式に徐々に上げていくというか。でもやっぱり、クライアントが変わる度に上げていったという感じですよね。同じ人とのやりとりでは上げていけないのは同じですよね。

ニシグチ:やっぱり実績で「これでこれぐらいだ」っていうのを見せないと、価格って判断しにくいなって思ったので、ああいうnoteを書き出したのはあります。

サタケ:あれ、とても分かりやすいと思います。あれ見たら、「ああやっぱりこれぐらいは出さないとな」って思います。

ニシグチ:そこが凄い大事だと思っていて。デザイナーもそうですけど、名刺一枚作るって言っても「こういう企画書を出して、こう直して、こういう想いで、こうやって作ってます」って過程があるからその価値が出るということ。そこって結構、決めるときに大事にする部分じゃないですか。僕らはやっぱり、知らない人に「どういう提案出してくれるんかな」ってなるので。僕がイラストレーターさんとやろうと思っているのが、どういう感じで描いてるかを動画で見せて、制作過程を見せる。それはけっこうデカイと思う。

サタケ:説得材料になりますよね。

ニシグチ:デザインの場合は画像で見せたらわかるんですけど、イラストの場合、サタケさんもやられてるように、タイムラプスとかをやって、実際どう使われるのかという所まで落とし込まないといけないと僕は思うんですよね。ある程度の質感を保ちつつ、そのプロセスを公開する。依頼する人って、納得するからこそお金を出すわけであって、結果だけ見せられても「これにこんなに価値ありますか?」って多分分からない。サタケさんはきっとそこを分かってて発信されてるのかな、と。

サタケ:安く金額を言ってくる人は、きっとそこを分からずに言ってるんですよね。悪気なく言ってくる人もいます。出来上がりを見て、「これ1時間あったらかけますよね?」みたいな(笑)。本当はそれを考えるまでに、資料集めて、ラフを描いて、検証して、とかの時間ががあるんだけど、そこが見えてないだけで、それが見えたら分かってくれる人も多い。

ニシグチ:イラストレーターさんだけじゃなくてデザイナーさんもそうですけど、色々考えてるわけじゃないですか。資料集めたり、「写実的に描かないといけない」とかの要望もあったりする。そこをちゃんと「写実的に描くために色々調べてました」という所から入ったら、割と納得するんじゃないかな。

サタケ:やっぱり、お互いにもっと知る必要があるんじゃないかなと。こういう仕事を頼んでる、こういう仕事をもらってるっていうのを、双方がきちんと共有出来ると良いのかなと思います。

~~~ 

「foriio Creators meet up vol.3 in Osaka  クリエイターとクライアント、双方から考えるお仕事獲得術!」イベントレポート・後編は7月8日(月)UP予定です。お楽しみに!